厳冬期 北八ヶ岳「東天狗岳(2643m)・西天狗岳(2646m)」

「洗礼1:地吹雪の稜線」
道がわかりづらいためコンパスで東天狗岳の方向を確認し、山頂へのトレースを発見。ここからは痩せ尾根で東側斜面が切れ落ちているため、注意が必要な箇所だ。滑落したら命はないだろう。稜線らしく強風が吹きあれてきた。突風で体が飛ばされないよういつでも耐風姿勢を取れるように心構える。雪や地面の氷が顔にあたり痛いため風下を向きつつ進む。UDAは目出帽を装着した。強風でトレースが消えている所が多いが尾根づたいに進む道は一つなので迷う事はない。場所によっては岩、氷がミックスになっているところもありガチャガチャとアイゼンが音をたてる。
そしていよいよ最後の急登が見えてきた。

東天狗への急登 苦戦している先行者2人          Photo by STK Nikon D70

二人ほど上のほうに張り付いているのが見える。正直「結構急だなー」と感じた。しかもここは膝近い新雪で道はまったくわからない。半ばラッセルのような雰囲気だ。ますます風が強くなり視界は悪くなる。上の二人がつけたトレースに添いアタック開始。案の定雪が深く登りづらい。がに股でキックステップをしてザクッザクッと雪を踏みしめて登る。
上の二人は急登にてこづっている様子ですぐに姿が近くなってきた。突風のたび体をしっかり固定してかなり慎重に登っている様子。とはいっても体を飛ばされるほどではないのでこちらはある程度勢いをつけて登っていく。夫婦の2人パーティーであろうか、最初に女性の方に追いつき道を譲ってもらった。
急斜面でのキックステップにも慣れそのまま一気に頂上目指して突き進んだ。頂上まで50mくらいのところで男性の方に追いつき先にいかせてもらう。ここまでくればあと少し、ただし寒さはハンパじゃない。体はウェアで寒くないが露出している顔が凍てつくようだ。最後は岩がごつごつし鎖場になっている。岩には樹氷ならぬ岩氷?が風上に向かって育っていた。10月の硫黄岳を思い出す強風が氷の粒をのせ顔を叩く。ゴーグル買ってくりゃよかったなと考えつつ、顔を背けるわけにもいかないのでそのまま進む。鎖は使わずピッケルワークで岩場を越えると頂上は目の前だった。

岩場をトラバースするUDA          Photo by Nikon D70

岩場をトラバースしつつ進むといよいよ東天狗岳の頂上だ!視界は最悪だがとりあえず写真を何枚か撮る。寒さで動作するか不安だったがボディのバッテリー側にカイロを巻いた甲斐があったか、D70のシャッターは問題なく切ることが出来た。頂上付近は数人いる程度で風がすごいため長居する人はいない。UDAは目出帽は鼻水が凍って使い勝手が悪いとぼやいている。
と!ここでアイゼンをはじめてひっかけた。アイゼンに慣れていない人は前爪を地面にひっかけたり自分の靴に引っ掛けたりして転ぶ事が多いそうだ。場所によっては致命的な場合もある。自分の場合は方向転換の際、靴同士をアイゼンで引っ掛けた形だがこれも多いケースらしい。ただしバランスを崩しかけただけで転倒には至らなかった。
寒さがひど過ぎるので第一目標の東天狗をあとにし西に見える西天狗岳に向け歩を進める事にした。

 
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